研究概要 |
前年度に引き続き,捕集地点での粒子状物質の特徴やその長期的変化を知るのに好都合な空調設備バグフィルター捕集試料や短期間の汚染状況の把握に適したロ-ボリュームサンプラーによりフィルター上に捕集した試料を用いて,系統的状態分析法を研究した.すなわち,キシレンやアセトンを溶媒に用い,超音波を照射しながら,繰り返し抽出を行い,有機溶媒に可溶な形態で,どんな元素がどの程度含まれるかをICP発光分析法により検討した.キシレン抽出液はそのまま,アセトン抽出液はDIBKで5倍に希釈することによりICP装置に導入できた.定量の結果,水溶性成分や酸可溶性成分中に比べるとはるかに低い濃度であるが,カルシウム,鉄,亜鉛,銅,マグネシウムなどがこれらに可溶な形態で含まれ,試料によりそれぞれ特徴があることが分かった.このような有機溶媒可溶成分中の金属元素は,有機水銀や有機スズなど特別なものを除いて,これまではほとんど検討されてこなかったので,興味深い結果と思われる.有機成分のガスクロマトグラフィー/質量分析については引き続き検討課題として残ったが,これまでに確立した,水溶性・酸可溶性成分の系統的定量分析法,酸不溶性成分の重液分離/X線回折・蛍光X線分析法,元素状炭素と不溶性有機質炭素の分別定量法などと組み合わせることにより,系統的・総合的な解析が可能になると考えられる.山梨県内の各地でメンブランフィルター上に捕集した大気粒子状物質試料について,前濃縮/X線回折・蛍光X線分析法による系統的状態分析を行い地域的特徴を比較したが,今後さらに種種の実際試料に適用して,その応用性・有用性を確かめたい.
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