液体クロマトグラフィと組み合わせて、簡単なフロー法を開発した。また、パーソナルコンピュータにNMRデータを構築することにより、新しい複雑なスペクトルの解析が短時間にできるようになった。かくして、ダイナミック法を種々の研究プロジェクトに応用して、成果をあげることができた。 1)1-Naphthyliminodimagnesium dibromide からdibenzophenazine が生成する新しい反応の解明を、4種の構造異性体のNMRによる識別に基づきおこなった。さらに、得られた結果により、従来の Ullmann-Ankersmit 反応の誤りを指摘した。選択的に[a.j]体を得る方法も見出した。 2)DNA突然変異に関連して、放射線照射により生成するラジカルに対するアスコルビン酸の防御作用を検討した。医学用のMR造影剤の新規開発に、ダイナミック法を用いた。 3)新しいポリマー原料のためのフラン誘導体や、エレクトロルミネッセンス素子としてのタ-フェニル型複素環化合物などの研究における複雑なスペクトルの解析に、本方法を有効に用いた。 4)平成8年度から島根大学に転任したために、液体クロマトグラフィーが使用できなくなり、一部実験手法を変更した。変更した研究の一つは、コルベ・シュミット反応における[アルカリ金属フェノラート・二酸化炭素]複合体の問題である。その存在が長年推定されていたが、NMRによる時間変化を追跡することにより、間違いなく複合体であることを証明した。ダイナミック法によりその化学構造も決めることができた。
|