研究概要 |
本研究では,従来のリンの測定法よりも簡単な測定法の確立を目的として,リン酸を特異的に結合するリン酸結合タンパク質(phosphate binding protein:PBP)を膜に固定化し、その膜のリン酸に対する膜電位変化の検出法を検討しリン酸を直接電気信号に変換することを試みた。PBPは大腸菌から抽出・精製したものを用いた。得られたPBPを濃縮し牛血清アルブミン(BSA)をPBP:BSA=2:3の割合で混合し,グルタルアルデヒド溶液で架橋してニトロセルロース(pore size0.2μm)膜上に固定化した。この膜を2室からなるH型セルの間にセットして2本の銀/塩化銀電極を二つのセルに挿入して膜電位差を測定する装置を作製した。既知濃度のリン酸カリウム水溶液を用いて測定条件を決定し,リン酸イオン以外の陰イオンの影響を調べ,検量線を作製した。 この測定装置を用いてリン酸に対する応答を調べたところ,リン酸によって膜電位が減少することが確認された。この膜電位の減少を応答値として測定し,測定条件の検討を行った。測定条件は温度35℃,bufferのpH8.5・KCl濃度60mMが最適であった。この条件で得られた検量線から、測定可能なリン酸濃度範囲は0.2〜1.5mMであった。これらの実験結果から,リン酸濃度を膜電位変化から測定することが可能なことが示された。このセンサー応答に対するの他の陰イオンの影響は,硫酸イオン・酢酸イオン・炭酸イオン・臭化物イオン・ヨウ化物イオンに対しては問題ないが,クエン酸イオンとヒ酸イオンに対しては膜電位が認められた。クエン酸イオンはこの膜をまったく透過しないことが実験的に確認され、クエン酸イオンに対する応答は、セル間のイオン強度差によるものであることが示唆された。
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