研究概要 |
本研究では,従来のリン酸測定法よりも簡便な測定法の開発を目的として,リン酸結合タンパク質を用いたリエージェントレスリン酸センサーシステムについて研究をおこなった。まず,大腸菌からリン酸結合タンパク質の分離精製とその活性測定をおこなった。その結果,この方法でリン酸結合タンパク質を単離することができ,また単離したものについては活性があることが確認された。 次に、得られたPBPをBSAと架橋して膜に固定化し、H型セルおよび2本のAg/AgCl電極を用いて、この膜がリン酸に対して特異的な膜電位変化を示すことを確認した。 さらに,電極デバイスとしてISFETを用いたPBP固定化ISFETで,リン酸計測をおこなった。PBPを直接固定化したISFETではK_2HPO_4濃度10〜20mMの範囲でK_2HPO_4に依存した電位変化が認められた。しかしながら,安定性の面で問題があり,K_2HPO_4以外の塩に対する応答を調べることができなかった。このため,この応答のリン酸に対する選択性を十分に検討するには,安定性を向上させる必要があることがわかった。 最後に,電極デバイスとして白金黒電極を使用したPBP固定化白金黒電極について検討した。その結果,PBP固定化白金黒電極とPVA-SbQのみをつけた白金黒電極のそれぞれの塩の傾きの違いから,この電極は他の塩と比べリン酸に対して高い選択性で応答しており,PBP固定化膜をつけることによってリン酸濃度を膜電位として測定できる可能性が示唆された。以上の結果から,リン酸結合タンパク質を用いたリエージェントレスリン酸センサーシステムで,リン酸を測定できる可能性が見出された。
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