本研究は、ラフネス・ファクターが約2000の大表面積の多孔質貴金属酸化物被覆チタン電極を作製して自動車に搭載可能な大容量キャパシタを開発する事を目的としている。そのために、活性種(プロトンの吸着サイトになり得る物質)に酸化ルテニウムを主体とする貴金属と遷移金属、担体に酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、これら複合酸化物薄膜の基板に金属チタン箔を用いる新規なDSA型電極を設計・制作した。 本年度の主な実績は下記の通りである。 塩化ルテニウムに希土類元素の塩化物を加え、塗布法により複合酸化物電極を作製すると、電極表面積が10倍程度大きくなる事を発見し、酸により希土類酸化物を溶解除去した後も、電極表面積は大きい事を確認した。高分解能SEMにより電極表面を観察したところ、希土類酸化物溶解前後の双方において、数十ナノメートルの細孔の生成が認められた。また、添加する希土類元素のイオン半径が大きいほど酸化ルテニウム電極の表面積は大きく、酸化ランタンが最大の表面積増大効果を示した。さらに、ルテニウムと、一連の第一遷移元素との複合酸化物電極を作製し、活性表面積を調べたところ、酸化ルテニウム一酸化バナジウム系が非常に大きな値を示す事を見出した。 一方、上記の複合酸化物系がいずれも結晶度が低いため、それらの複合酸化物の構造解析を、高エネルギー研究所のEXAFSにより調べ、アモルファス状態から結晶相になる過程における相分離の様子を解明した。 また、酸化ルテニウム一酸化タンタル系、酸化ルテニウム一酸化チタン系の各電極につきキャパシタを構成し、その特性を評価したところ、応答性の良好なキャパシタが作製可能な事が明らかとなった。
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