1.極低温ラマン散乱測定用クライオスタットの改良を行った。(1)励起光導入用窓部に凹型皿部を新たに設置することにより、固体空気等の降下物の窓ガラスへの付着を避けることが可能になった。(2)試料固定部を45°回転型に改良し、照射試料を固定後、散乱光が入射光に対し直角に放出するように回転させるようにした。これによって、散乱光を従来の2.5倍効率良く光電子増倍管に導入することができるようになった。 2.FT-IR用極低温赤外吸収測定用クライオスタットを設計し、試作した。冷却したヘリウムガス(15K〜35K)を直接試料面に吹付ける方式と、窓なしクライオスタット-窓のかわりに冷却した窒素ガスのカ-テンを作り外気と遮断する方式を採用して精度良い測定が行えることを確認した。 3.エタノール溶液(LiClを含む)中の放射線照射による生成種の代表である水素分子の収量をラマン分光法によって測定し、他の生成種の収量とのLiCl濃度依存性を詳細に調べた。この結果、固体エタノールのローカルな構造が照射による初期生成種の捕捉に大きく関与していることが振動分光法を用いた実験か明らかになった。 4.フラーレンを含む有機固体についても放射線照射によるラジカルアニオンの生成を確認した。 5.これらの研究成果の一部は低温化学セミナー(平成7年7月・原研・東海研)、放射線化学討論会(平成7年10月・金沢工業大)、ESR討論会(平成7年11月・愛媛大)にて発表し、次頁の雑誌に発表している。
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