エイズセンサの実用化を考えるとき、以下の点を克服しなければならない。(1)エイズウイルス構成タンパクの中、少なくともgp41およびp24に対する抗体の検出系を確立すること、特に、検出と同時に確定診断が出来るように定量測定を行く事、(2)これらの測定時間が短い事、(3)血清を用いた場合でも高感度で両者の定量が可能な事、である。本研究では短時間で測定が可能で、かつ、検体の定量も行える特徴をもつ表面プラズモン共鳴(SPR)を用いる事により上記(1)、(2)、(3)の課題に取り組んだ。 まずセンサチップ上への抗原の固定化方法の検討から入った。センサチップの金表面をDBAで処理し、ついでEDPCとNHSによりDBAを活性化しておき、これに目的の抗原を反応させる事で非常に安定な化学的固定が出来る事を見出した。次に、抗gp41抗体の検出系では、抗原にgp41の保存領域部分をセンサチップ上に化学固定して、抗gp41抗体の測定を試みたところ、抗体濃度1〜20ug/mlの濃度範囲で定量が可能であった。抗p24抗体の検出には、遺伝子工学的に大腸菌に発現させ、それをアフィニティー精製したp24を固定化抗原とした。この測定系では1-40ug/mlの濃度範囲でp24抗体の定量が可能であった。両方の測定とも1サンプルあたり、約5分で結果を得る事が出来、これまでの方法に較べかなりの短時間で定量が可能な事が判った。次の問題は、バイオセンサでは血清中の夾雑物質による測定信号への影響が非常に大きく、これをいかに克服するかである。上記の測定方法で血清中に存在する両抗体の検出を行ったが、検出感度・範囲とも極端に低下した。これを克服するためには、抗原固定化後のブロッキングに血清そのものを使用すること、さらに血清を56℃、30分の加熱処理をすることで、短時間での高感度測定が可能である事を明らかにした。
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