本年度においては、輸送機器の中でも鉄道車両、航空機などに使用されるJIS7N01(Al-Zn-Mg合金)の時効をクロノポテンシオメトリーにより評価する手法について検討した。まずJIS7N01を等温時効し水中に焼き入れすることにより試料を作成した。続いてこれら各試料について、硬度測定を行なうことにより時効進行を確認した。さらに各試料についてNaCl中においてサイクリックボルタモグラムを測定し、時効析出相の溶解挙動及びマトリックスの孔食溶解の指標となる孔食電位の時効に伴う変化を測定した。続いてこれら二つの特性電位に自然浸漬電位から定電位ステップ電解を行い、その時のごく短時間の電流-時間曲線(クロノアンペログラム)からそれぞれの溶解に要する電気量を算出した(PSCA)。これら電気量と時効時間の関係から次の三点が明らかとなった。(1)孔食電位は時効の進行とともに貫な方向へシフトしたが、ピーク時効付近で一定となった。(2)これに対してPSCAによる中間析出物MgZn_2の溶解電気量は、ピーク時効までは一定で、それ以降に急激に増加した。(3)孔食領域におけるPSCAも、孔食電位直上の電位での結果では、(2)と同様の結果を得た。これにより実用的に関心がもたれるピーク時効以降(ピーク時効、過時効)の時効状態の評価にはPSCAが有効であることがわかった。これらの結果は平成7年8月に中国で開催された第46回国際電気化学会議において発表された(本報告書11-1参照)。また他の輸送機器用アルミニウム合金への適用性も併せて検討した。あわせて同様の手法を用いてアルミニウム合金以外の比強度が高いために今後輸送機器に多用されることが考えられるC/Cコンピジットに関しても検討をした。これらの研究は諸についたばかりであるが、その萌芽的成果は、本報告書11-2〜4に参照した文献において報告されている。
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