輸送機器用アルミニウム合金として1.Al-Zn-Mg合金をまずとりあげ、クロノアンペンタメトリー法による時効進行度の評価の可能性を考察した。この手法を他の材料に適用可能かどうかを2.C/Cコンポジット、3.オーステナイト系ステンレス鋼SUS304に関して検討した。 1.Al-Zm-Ag合金の時効進行度の評価 450℃にて溶体化後120℃にて人工時効した試料を電極とし、対極には白金電極、参照極としては銀/塩化銀電極を用いてこれら三極をポテンシオスタットに接続し、関数発生器、デジタルストレージオッシロスコープと組み合わせ、自然浸漬電位、サイクリックボルタンメトリーによる孔食時間、クロノアンペロメトリーによる各特性電位における電流の過渡応答からの電気量の三つのパラメーターと時効時間との相関を調べた。その結果いずれも一長一短があり、アンダー時効、ピーク時効、過時効のすべての領域にわたって時効を電気化学的に評価するためにはすべてを相補的に使用する必要があることが分かった。クロノアンペロメトリー法に関してはピーク時効から過時効に移行する点を検出するのに有効であることが分かった。 2.C/Cコンポジット黒鉛化度の評価 1の手法を同じ比強度の高い先端複合材料C/Cコンポジットの熱処理による黒鉛構造の発達度(黒鉛化度)の電気化学的評価に用いた。希硫酸中における表面皮膜の生成反応が黒鉛化の増加に伴い変化することがわかった。この黒鉛化度の増加はサクリックボルタモグラムで半定量的に評価できるが、クロノアンペロメトリー法により定量的に評価できることが分かった。 3.オーステナイト系ステンレス鋼の鋭敏化の評価 同様の手法をオーステナイト系ステンレス鋼SU S304に適用した。従来のサイクリックボルタンメトリーによる電気化学的再活性化法と、クロノアンペロメトリー法による修正化学的再活性化法とを比較検討し、後者においては前者と同じ傾向がより迅速に得られることを明らかにした。
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