近年の輸送機器の軽量化、高速化に伴い従来の鉄鋼材料主体の材料使用から、次第に比強度の高いアルミニウム合金の適用への移行が検討されてきている。このような背景から、本研究では、アルミニウム合金の熱処理(時効)による強化の程度を、電気化学的に評価することを目的として研究を開始した。本研究では、電気化学的な手法の一つであるサイクリックボルタンメトリー法およびクロノアンペロメトリー法、クロノポテンシオメトリー法を用いて検討を行った。1995年から始まった3年間の試験期間において検討した事項は以下の諸点である。 1.飛翔用アルミニウム合金として多用されるAl-Zn-Mg合金について、サイクリックボルタンメトリー、クロノアンペロメトリー、クロノポテンシオメトリーを用いて、時効進行度の評価を試みた。 2.ピストン用合金として用いられている多元系アルミニウム合金鋳物のAl-Si-Cu-Ni-Mg多元系軽合金の時効進行度の電気化学的評価の可能性を検討した。 3.クロノアンペロメトリー法と同程度に迅速評価の期待できる定電流ステップ電解によるクロノポテンシオメトリー法に着目し、これのAl-Mg合金時効進行度への適用を検討した。 4.オーステナイト系ステンレス鋼として、304鋼にたいしてさらにモリブデンを添加したSUS316鋼について、クロノアンペロメトリー法を適用し、熱処理による構造変化を評価できるかどうかを検討した。 5.C/CコンポジットとしてPAN系炭素繊維からなるC/Cに着目し、熱処理こよる構造変化(黒鉛化)を電気化学的に評価することができるかどうかを検討した。 以上の諸点に関して、いずれも実り多い結果が得られ、クロノアンペロメトリー法を始めとする電気化学的計測がアルミニウム合金を始めとする種々の材料の相変態の計測に適用可能であり、本法の有効性が総合的に確認された。
|