研究概要 |
本研究は、光エネルギー変換素子としての「生成物分離型光化学ダイオード」の動作機能を確認するとともに二酸化炭素の還元により有機化合物を合成することを具体的な目的としており、平成7年度と平成8年度の2年計画で実施した。得られた研究成果の概要は以下の通りである。 1.チタン板の片面を焼成により酸化チタン半導体薄膜とし、これにより2種の電解質溶液を完全に仕切って2室セルとした「生成物分離型光化学ダイオード」を作製した。そのチタン側に硫酸銅水溶液を入れ、酸化チタン面へのXe光照射を行うと暗部チタン金属上に銅が析出した。このことから、0.25mol/dm^3K_2SO_4,n-TiO_2/Ti,CuSO_4(aq)からなる光化学ダイオードの電荷分離と両サイトにおける酸化還元反応の機能を確認した。 2.光化学ダイオードのチタン側溶液に炭酸水素塩溶液を入れて光照射を行うと、酸化チタン側では水分解による酸素発生、金属チタン側ではもっぱら水素発生が起こることが分かった。しかし、チタン金属面に予め銅を電析させるか溶液中に硫酸銅を共存させると、二酸化炭素の還元により水素や一酸化炭素のほかメタン、エチレン等が生成することが明らかとなった。 3.n-TiO_2/p-Siからなるp-n接合型光化学ダイオードによる水分解では、上記ショットキー型の光化学ダイオードに比べ、およそ2倍の水素生成速度を示したが、量子収率ではさほどの効果はみられなかった。 4.光触媒利用の観点からは、光触媒をゲスト分子とする黒鉛層間化合物の新規の合成法を開発するため、先ず穏やかな条件下での電解還元法によるインターカレーションについて検討し、条件次第では黒鉛層間化合物の合成が可能であることを見出した。
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