研究概要 |
本研究ではアルミナ質非対称多孔質基板上に白金薄膜及びTiO_2薄膜をスパッター法及びゾルゲル法を用いてコーティングすることにより多層構造を持つ光触媒を作製した。また種々の測定手段を用いて得られた試料のキャラクタリゼーションを行うとともに,光照射による水溶液中からの水素発生量を測定し試料の光触媒特性を評価した。 まずXPS測定,FE-SEM観察などの結果より,TiO_2薄膜の厚さを約20〜350nmまで制御して作製できること,350℃以上での熱処理により触媒活性の高いAnatase相TiO_2が得られることが分かった。またエタノール水溶液中での光照射による水素発生実験を行った結果,TiO_2単位質量当たりの水素発生速度は最大0.20mol/hであった。この値を市販の一般的なPt担持TiO_2(Anatase)微粒子の測定値と比較した結果,水素発生速度が約8倍になっていることが分かった。一方,白金基板上に同様の方法でTiO_2薄膜を作製しKCl水溶液中でのポテンショスタットを用いた電気化学的電流-電位測定を行った結果,光電流値は照射光量に対する応答性を示し,フラットバンド電位は-0.5〜-0.7VvsSCEの値が得られ,TiO_2相の伝導帯下端の電位は水の還元電位(H^+/H_2)より負側にあることを確認した。さらにマグネトロンスパッター装置を用いてガラス基板にコートした金属Ti薄膜あるいは金属Ti基板上にTiO_2薄膜を形成した試料を作製し電気化学的電流-電位測定を行った結果,光電流値が白金基板上にコートした場合と比較して約20倍になっていることが分かった。 以上の結果より非対称多孔質基板上に白金・TiO_2薄膜をヲコートした多層構造の光触媒が高い光触媒活性を持つことが明らかになった。今後は各薄膜をさらに高度に複合化することにより,より高活性の光触媒材料を得られるものと考えられる。
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