研究概要 |
ゾル-ゲル反応の加水分解過程-重縮合過程の反応機構を調べるために,オルトケイ酸テトラエチルやその官能基の一部をメチル基で置換したものなど数種のシリコンアルコキシドについて,反応熱を測定した。その結果として,次のことがわかった。 (1)オルトケイ酸テトラエチルのゾル-ゲル反応の加水分解過程が大きな発熱反応であるのに対して,重縮合過程は非常に小さな吸熱または発熱反応である。重縮合過程の反応熱が非常に小さいことは水溶液系では以前から知られていたが,本研究により,ゾル-ゲル反応の溶媒であるアルコール-水共存系においても同じであるということがわかった。 (2)加水分解初期の発熱速度が,TEOSでは酸触媒濃度に対して1.5乗に,MTESでは1.3乗に比例する。このように反応指数が整数にならないのは,加水分解反応が数段階の逐次反応であるためと考えられた。 (3)触媒濃度が高くなると,加水分解初期の発熱速度は触媒濃度によらず一定となる。これは,触媒濃度が低濃度のときは反応律速となるが、高濃度のときにはアルコキシドの拡散が律速となるためと考えられる。 (4)TEOSの反応初期の発熱速度は水の濃度の0.24乗に比例した。これは,水がエタノール溶媒中でクラスターとなって存在しているためと考えられる。 また以上の熱力学的研究と共に実施した真空紫外反射率に関する分光研究から,これらの反応によって得られた酸化物ゲルはシリカガラスと異なった網目構造をもつことが明らかになった。
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