研究概要 |
BaTiO_3薄膜は,DRAM,FRAM,焦電検出器,電気光学デバイスなどへの応用が期待されている.最近,活性蒸着法,パルスレーザー法,ゾル・ゲル法により,P-Eヒステリシス曲線を示す薄膜が作製された.しかし,ゾル・ゲル法により作製されたBaTiO_3薄膜では,誘電率-温度特性において,キュリーピーク(120℃付近)は確認できていない. 本研究では,金属アルコキシド溶液を用いたゾル・ゲル法により,強誘電性BaTiO_3薄膜を作製し,薄膜の微細構造制御を行なうことを目的とした.また、高温度熱処理(850℃)した薄膜は,耐高温基板としてPt板を使用した. コーティング/焼成(850℃)のプロセスを繰り返し,膜厚が増加するとその薄膜の結晶粒は,既に生成している結晶粒の表面上からだけでなく,空隙,また,粒界部分から顕著に生成することが認められた.結晶粒子の核生成・成長は,気孔及び空隙部分に向けて起こり,微細構造の緻密化を促進する.粒径は,既に生成した粒子が核生成を促進するため,コーティング回数とともに小さくなり,ある膜厚でその結晶粒の大きさは、一定となる。 その強誘電特性は,室温で,膜厚0.45μmのとき,Pr=3.8μC/cm^2,Ec=20kV/cmを示し,そのヒステリシス幅は狭く,低電界での駆動が可能であるためメモリへの応用が十分,期待できる. BaTiO_3薄膜の誘電率-温度特性において,室温下で,誘電率830,誘電損失0.04を示し,最大誘電率を示すブロードのピークは,70℃付近に認められた.最大誘電率を示す温度(キュリー点),すなわち相転移は結晶粒径及びその微構造に依存するものと思われる. Pt板のキズなどの粗い表面が,成膜後のBaTiO_3薄膜の結晶性の低下及び結晶粒の生成・成長に影響していると思われる.
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