本研究は局所構造が主にGeO_6-8面体からなる非晶質GeO_2の合成を目的とした。まず出発原料のゲルマニウムイソプロポキシド[Ge(OiPr)_4]にアセチルアセトンを加え、加水分解させた。反応速度を適当に制御すると、液は透明のまゝ内容物は次第にシネレシスを起こしはじめ、無色透明のゲルとなって固化する場合があった。これらの試料の粉末X線回折図形はすべてブロードなハロ-を示し、非晶質であることが判明した。反応は再現性に乏しかったが、この出発物質からゲルを生成することが分かったので、次の実験を試行した。 [Ge(OiPr)_4]とイソプロパノールの混合溶液を用意し、これにNH_4OHとH_2Oとを加えた。この溶液にN-Nジメチールベンジルアミンを滴下したのち乾燥させたところ、試料はシネレシスを起こし透明なゲルとなった。X線回折の結果、非晶質であることが分かった。ゲルを大気中で加熱すると、500℃までは変化しないが、600℃ではα-セキエイ型に結晶化した。 シネレシスを起こしたゲルを銀チューブ内に封入し、外部から静水圧を加えながら加熱した。温度が150℃以上になると結晶化が始まったが、出現する相は圧力の大きさに依存し、圧が200MPa以下ではα-セキエイ型、これを超えるとルチル型となった。そこでゲルをまず室温で200MPaまで加圧したのち大気中に取り出し加熱すると、500℃でルチル型として結晶化した。この事実は200MPaの圧縮によってゲルはGeO_6-8面体を局所的に含む構造を持つようになり、これが加熱によってルチル型に結晶化したことを示すものである。すなわち加熱前は本研究で合成を指向した高密度非晶質の状態にあったと予想され、高密度非晶質GeO_2が合成されたと考えて良い。
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