研究概要 |
本研究における平成9年度の研究実績は次の通りてある。 1)アザ-18-クラウン環を合成し、この分子の窒素原子にジカルボン酸塩化物を反応させ、ジアミドとし、これを還元して二つのアザクラウン環を有するビスアザ-18-クラウン-6を合成した。また、このウイングにベンゼン環を持つビスアザクラウンも同様にして合成した。更にジアザクラウンの二つの窒素原子に二本のウイングをつけ、クリプタンドを合成した。 2)ビスアザクラウン、クリプタンドをそれぞれホストとして用い、2,2-ジベンジルマロン酸ジカリウムおよびテレフタル酸ジカリウムをゲストとして、メタノール/塩化メチレン中で包摂実験を行った。液-液抽出はできなかったが、溶液中の^1H-NMRおよび^<13>C-NMRからカリウムイオンがアザクラウン環に包摂され、ジカルボン酸アニオンが二つのアザクラウン環の間に包摂されていることがわかった。この結果、ジアザクラウンはアロステリックホストとしての機能を有することが示された。 3)アロステリックホスト化合物の一つとしての金属イオン輸送を試みた。キノリン環を有するスピロピランを合成し、Cu(II)イオンの液-液輸送を明らかにした。またCu(II),Zn(II),Pb(II),Ni(II),Ca(II)イオンを混合させた水溶液を水層(I)とし、スピロピランのジクロロメタン溶液を間にはさんで、他方に酢酸水溶液を接触させ、イオン輸送を行ったところ、Cu(II)イオンのみが選択的に輸送され、他は輸送されない事が判明した。
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