1.ビタミンB_<12>を疎水的に化学修飾した化合物を合成し、このコバルト錯体を用いて炭素骨格組み替え反応を行った。一例として、アセチルアミノマロン酸誘導体からアセチルアスパラギン酸誘導体への変換反応に成功した。この反応は媒体の影響をうけやすく、合成二分子膜のようなアポタンパク類似の反応場で転位反応が進行しやすいことを明らかにした。 2.ビスサリシルアルドイミン配位子をもつ新規コバルト二核錯体を合成した。本錯体の2つのコバルト原子は2個のフェノール性酸素により架橋され、イミノ窒素に配位した構造を有している。この二核錯体の酸化還元挙動をサイクリックボルタンメトリー法により検討した。Co(III)/Co(II)およびCo(II)/Co(I)の酸化還元に基づく可逆なピークが観測された。Co(III)/Co(II)に基づくピークが2種類観測されたことより、2個のコバルトに対してCo(III)/Co(II)の酸化還元は1電子づつ電子移動するが、Co(II)/Co(I)については一度に2電子移動が起こると推察される。合成した新規コバルト二核錯体の中心金属コバルトを、水素化ホウ素ナトリウムにより還元しCo(I)状態にした。これに、ヨウ化メチルを添加すると光敏感性の化合物に変化した。このことより、コバルト-炭素結合を有する化合物が生成したと判断される。 3.ピロール環を6個有する拡張型ポルフィリンの一つであるアミスリンを合成した。この配位子に亜鉛イオンを反応させると二核錯体が生成した。一方、コバルトイオンを反応させた場合には単核錯体が生成した。従って、アミスリンは金属イオンの種類により二核または単核錯体を生成することが明らかになった。
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