研究概要 |
ビタミンB_<12>依存性酵素は炭素骨格の組み替え反応を含み、有機合成化学的観点から極めて興味深い。その活性中心はコリン環を配位子としたコバルト錯体であり、コバルト-炭素結合の開裂によるラジカル種の生成が本酵素反応の引き金となっている。当該年度ではこのコバルト-炭素結合を利用した新規触媒系の開発を目指し、有機化学的に極めて重要である環状化合物の合成に焦点を当て研究を行った。すなわち2つの金属間を架橋したジアルキル錯体を合成し、その開裂生成物である二端ラジカルの分子内結合による環状化合物の合成を目指した。 まず単核錯体を用いた分子間架橋型アルキル錯体および二核錯体を用いた分子内架橋型アルキル錯体の合成を行った。前者はCosta型錯体と1、5-ジブロモペンタンとの反応により合成し、その光照射生成物として5員環化合物が生成することを見い出した。しかし、単核錯体ではこの反応を制御することが難しく、そこで2つの金属間距離を制御できる二核錯体を用い、分子内架橋型アルキル錯体の合成を試みた。二核化配位子としては、シッフ塩基を基本骨格とした新規配位子を分子設計し、メチレンビス(4,4'-サリチルアルデヒド)とサリチルアルデヒドおよびエチレンジアミンとのone-pot反応により10%の収率で合成した。しかしその二核錯体を用いた分子内架橋型アルキル錯体の生成条件を見い出すには至らなかった。
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