研究概要 |
本研究はプラズマによって生成する無機ガスからの原子状活性種に加えて有機分子由来の活性種を最大限に活用することにより新たな有機反応、特に種々の炭素骨格上へのヘテロ原子の一段階直接導入のための手法を開発、確立することを目的としている。従来このような高エネルギー条件下での反応は選択性に乏しいという見解が一般的であったが、本研究ではプラズマと液相との相互作用およびそれから誘起される溶液内反応をも積極的に活用することにより活性種の反応性の制御を実現しようとするものである。 本年度は接触グロー放電電解法を用いて芳香族炭化水素への含酸素および含窒素官能基の導入反応を重点的に検討した。まず中性リン酸塩緩衡液を電解液、針状白金電極を陽極として直流高電圧を印加して接触グロー放電電解をおこなった。500V以上の電圧で安定な放電が陽極と液界面間で持続し、電解電流はほぼ50mAであった。フェノールが溶液中に存在すると環の水酸化が速やかに進行し、ヒドロキノン、カテコールが生成する。これらはさらにピロガロール、ヒドロキシヒドロキノンヘと酸化され、ついでテトラヒドロキシベンゼンを経て環が開裂し、酒石酸,リンゴ酸などの二塩基酸を与える。これらの有機酸は同条件下で最終的に二酸化炭素と水にまで分解される。溶液をアセトニトリルとした場合には芳香環のシアノ化が進行し、たとえばベンゼンからはベンゾニトリルが少量のトルエン、フェニルアセトニトリルとともに得られた。トルエンやベンゾニトリルを出発物質として反応をおこない得られたシアノ化生成物のo、m、pの異性体比の解析から反応のキ-ステップはシアノラジカルの芳香環への攻撃であることが明らかになった。
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