研究概要 |
新しい有機金属反応種の合成法を開発することは,新しい合成手法を提供することであり意義深い。最近,当研究室においてTi(OR)_4などの安価なTi(IV)化合物とGrignard反応剤との反応により系中でTi(II)化合物が生成し,これと不飽和炭化水素化合物とが反応し直接有機チタン化合物を与えることを見出している。 本研究では,分子内にカーボナ-トやエステルなどのカルボニル基を有する不飽和炭化水素化合物が上述のTi(II)反応剤と反応し容易に分子内求核アシル置換反応が進行し生成物として官能基を有する有機チタン化合物を高収率で与えることを見出し,この反応の一般性・適応性を明らかにすることを目的としている。平成7年度の研究の成果として,(1)反応は一般性高く進行し,アルキルアルキニルカーボナ-トからα-アルキリデンラクトンあるいはα,β-不飽和エステルが,アルキルアルケニルカーボナ-トからラクトンが,アルキルアセチレニック酸エステルからα-アルキリデン環状ケトンが,カルボン酸のアルキニルエステルからα,β-不飽和ケトンがいずれも高収率で得られること,(2)生成物はいずれの場合も有機チタン化合物であり,この反応性を利用して更なる合成反応が可能であること,例えばヨウ素化やカルボニル化合物との付加反応などが高収率で進行した,(3)いずれの場合も反応は温和で反応操作も極めて容易であり,平成8年度の研究計画で予定しているより複雑な化合物を合成する応用反応にも充分適応可能なことを明らかにすることができた。なお,以上の成果は報文(裏面の研究発表の項を参照)として報告した。 本反応は分子内環化反応を経て有機金属反応剤が直接生成する例の無い反応である点で学術的に興味深く,また安価な反応剤を用い,様々な応用が可能な新規環化反応手法として応用性・実用性のある有機合成上有用な反応と思われる。
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