トロンボキサンを含むエイコサイド類の受容体人工リガンドの効率合成のための高選択的合成プロセスについては、その基本骨格の構築に関して金属有機化合物の活用によりほぼ確立することができた。この手法を活用してトロンボキサン類縁化合物であり、同様に生体の恒常性の維持や生体防御に関わっている内因性生理活性物質であるプロスタグランジン類の受容体分子リガンドを設計し、合成することができた。例えば、PGF_<2α>受容体に関しては、リガンド分子と受容体タンパク質との相互作用を解析するため、側鎖官能基にアミノ基を導入し極性変換した探索分子を合成した。この化合物は受容体との結合性およびそのシグナル応答を確認するため生化学実験を行なう予定である。さらに受容体ポイントミューテーション手法による受容体タンパク質の人工変異体の作成と、探索分子との構造活性相関を検討している。また、強い細胞増殖抑制活性を示し、従来の局所ホルモン作用を示すプロスタグランジンとは活性模様の異なる新しい人工類縁体を創製することができた。続いて、金属触媒手法の活用により、この人工リガンドと特異的に結合して情報を伝えるタンパク質の捕獲、同定を目的とした光親和性標識用分子プローブを合成した。この分子プローブを用いた生化学実験が現在進行中である。トロンボキサンやプロスタグランジン類の側鎖部分の系統的構造修飾による人工リガンドの創製についても検討し、既にいくつかの候補化合物の合成にも成功している。これらの化合物とトロンボキサンあるいはプロスタグランジン受容体との相互作用についても検討していく予定である。
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