研究概要 |
本研究では、天然の光学活性アミノ酸(S)-バリンから1-[(4s)-4-イソプロピル-2-オキサゾリニル]-2-ブロモベンゼンを合成し、これにブチルリチウムとPPhCl_2を作用させて、光学活性なオキサゾリン基を含むホスフィン、ビス(2-[(4s)-4-イソプロピル-2-オキサゾリニル]フェニル)フェニルホスフィン(NPN)を合成した。これをRhCl_3・3H_2Oと室温で反応させ、[RhCl_3(NPN)](1)を得た。1はfacとmer-型の混合物であった。これをトルエン中還流し、mer-[RhCl_3(NPN)](1b)を単離した。1bのX線構造解析を行い、構造を確認した。1bの配位環境のうち、リン原子のトランス位に2ヶのイソプロピル基による不斉反応場が構築されているのが確かめられた。 錯体1bを触媒とし、ジフェニルシラン、メチルフェニルシランを用いてアセトフェノンのヒドロシリル化反応を行った。2-フェニルエタノールがそれぞれ43、55%で得られたが、光学収率は低い値であった。 NPN配位子と[{RhCl(COD)}_2](COD=1,5-シクロオクタジエン)との反応により、[RhCl(NPN)]を主成分とする錯体2を得た。 2+AgPF_6を触媒とし、α-アセトアミノケイ皮酸の水素化反応を行い、水素圧10気圧でほぼ100%の水素化物が得られた。しかし、この場合も不斉収率は高くなかった。1bにおける不斉反応場の2ヶのイソプロピル基が嵩高過ぎて、基質の接近を妨げていることも考えられる。 ルテニウム(II)錯体、トランス-[RuCl_2(CH_3CN)_4]とNPNとの反応により、[RuCl_2(NPN)(CH_3CN)]を得た。^<31>P NMRによると、室温で3種の異性体から成り立っていた。これを加熱すると^<31>P NMRでδ66.0,70.2,73.8にシグナルを示した。一方、[{RuCl_2(p-Cym)}_2](p-Cym=p-シメン)とNPNとの反応により、^<31>P NMRでδ73.8にシグナルを示す錯体が得られた。これは二核構造をもつと推定された。
|