研究概要 |
1.研究目的 本研究では,(1)光学不斉を持つホスフィン化糖誘導体を合成し,これを粘土鉱物層間にインターカレートさせた無機・有機ホストーゲスト化合物を合成する.(2)さらに金属イオンあるいは金属錯体を粘土鉱物層間にインターカレートすることにより,新規層間固定化糖錯体を合成する.(3)層間固定化糖錯体を用い,α,β-不飽和カルボン酸誘導体等の不斉水素化反応に対する触媒挙動を調べる.出発物質のキトサンは,(1)ルイス塩基のアミノ基を有するため,粘土鉱物層間にインターカレートし易いこと,(2)天然より安価に入手可能である,(3)不斉炭素を持ちヘリックスなどの高次構造も形成可能であるなどの理由から選択した. 2.実験および結果 (1)キトサンホスフィン誘導体の合成.キトキンの水酸基にNaPPh_2を直接反応させキトサンフォスファイト(chito-OP),有機溶媒に高溶解性のN-フタロイル化キトサンを合成し,水酸基をトシル化後,NaPPh_2で反応させたキトサンホスフィン(N-pht-chito-P)を合成した.(2)キトサン-ロジウム錯体の合成 chito-OPにRh(COD)ClO_4を反応させて,キトサン-ロジウム錯体([Rh(chito-OP)(COD)]ClO_4)を合成した.元素分析,FT-IRで構造解析を行った.(3)層間固定化触媒の合成 [Rh(chito-OP)(COD)]ClO_4をDMF/水混合溶媒中でNa^+-ヘクトライト(NaHT)と反応さ,カチオン交換法によりHT層間にインターカレートさせた([Rh(chito-OP)(COD)]^+/HT).XRD測定により,HTの底面間隔は2.02nmに拡大し,一分子層のRh錯体が層間に形成されていると考えられる.(4)層間固定化錯体を触媒として用い,イタコン酸ジブチルを室温,水素1気圧下,DMF中で反応させたところ,100%基質を消費したところで(R)-メチルコハク酸ジブチルが5-10%e.e.の選択率で得られた.さらに,種々の反応条件を検討して予定である.
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