1.研究目的 本研究では、(1)光学不斉を持つアミノ糖ホスファイト誘導体を合成し、これを配位子として[Rh(COD)Cl]_2と反応させ、新規ロジウム-キトサン錯体(Rh-Chito)を合成する。(2)得られたRh-Chitoを粘土鉱物層間にインターカレートさせた無機・有機ホストーゲスト錯体(Rh-Chito^+/NaHT)を合成する。(3)さらに、層間固定化錯体を触媒として用いて不飽和化合物の水素化反応を行い、不斉選択性および官能基選択性などの分子認識機能を調べる。 2.研究成果 (1)アミノ糖ホスファイト誘導体およびRh錯体の合成合成:アミノ糖としてキトサン(分子量2.6-2.9x10^3)を用いた。これをフタルイミド化し、ClPPh_2と反応させキトサンホスファイト(Chito-OP)を合成し、さらにRh-Chitoを合成した。構造解析により、Rh錯体はグルコース単位当たり1分子が2個の-PPh_2基によりキレート配位していると結論した。(2)ヘクトライト(HT)層間固定化錯体の合成:Rh-ChitoのHT層間へのインターカレーションは、水/DMF混合溶媒を用いることにより成功した。坦持量が34.6meq/100g-HTのとき、HTの底面間隔(d_<001>)は、2.02nmとなり、キトサン分子鎖はHT層間で2/1らせん構造を取っているものと結論した。(3)イタコン酸ジメチルの不斉水素化反応:均一系のRh-Chitoと比べて、反応速度は80%程度に低下し、主生成物は(R)-メチルコハク酸ジメチルであった。不斉選択性は、反応溶媒に大きく依存しEtOH/DMF混合溶媒を用いた場合、DMFの割合を減少すると選択性が著しく向上した。すなわち、EtOH/DMF=1で7.7%e.e.がEtOH/DMF=30で16.7%e.e.となった。このように、ロジウム-キトサン錯体を層間に固定化することにより、錯体の立体構造を制御して選択性を向上させることに成功した。(5)シトロネラールの水素化:疎水性のホスフィン基を持つ[Rh(PPh_3)_2(COD)]PF_6とRh-Chitoとの反応挙動を比較したところ、Rh-ChitoはC=CよりC=Oをより優先的に水素化することを発見した。 以上の成果より、層間で糖分子鎖の立体構造を制御し不斉選択性を向上させることができた。また、従来の疎水性ホスフィンとことなり、C=O水素化に活性があることから種々のケトンを基質に用いた不斉水素化反応に展開できると思われる。
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