血糖降下作用を有する分枝多糖の合成

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07651074
• 研究種目: 一般研究(C)
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 畑中 研一 東京工業大学, 生命理工学部, 助教授 (70167584)
• キーワード: グルコピラナン / 分枝多糖 / 血糖降下作用 / 酵素反応 / 開環重合 / α-D-グルコース

研究概要

微結晶セルロースの真空熱分解により得られた1,6-アンヒドロ-β-D-グルコピラノースを出発原料として、臭化ベンジルと酸化バリウムにより選択的にC-2位とC-4位の水酸基をベンジル化し、C-3位の水酸基をベンゾイル基で保護することによって、重合可能なモノマーを合成した。このモノマーを-40℃以下の低温で重合することにより、立体規則性の(1→6)-α-D-グルコピラナン誘導体とした。C-3位のベンゾイル基をナトリウムメトキシドにより選択的に外した後、フリーとなったC-3位をグリコシルイミデ-ト法によりグルコシル化(分枝化)した。液体アンモニア中の金属ナトリウムにより脱ベンジル化すると、水酸基フリーの分枝多糖が得られた。さらに、セルラーゼを作用させることによって、α-D-グルコースのみを有する分枝多糖とした。
合成した分枝多糖の血糖降下作用は正常マウスを用いて測定した。α-D-グルコースのみを有する分枝多糖(分枝度:0.38;数平均分子量:1.8x10^4)では、投与5、10時間後には投与直前の血糖値の65〜81%に低下し、24時間後に投与前の値に回復した。さらに、α-D-グルコース分枝の量を変化させることにより、33%〜44%の分枝度のものが強い活性を示すことが分かった。
重合により分枝多糖を合成し、血糖降下作用を発現させるという初期の目的は達成されている。さらに、分枝度の違いによる活性の変化に関しても結果が得られた。一方、糖鎖構造を変化させた分枝多糖(マンノース主鎖、キシロース側鎖、オリゴグルコース側鎖)に関しては、合成が困難であり、合成法を改良する必要がある。また、酵素反応を用いた分枝化に関しても、実現のためには、いくつかの点に問題が残っている。これらの問題点を解決する一つの方法として、天然多糖を原料とした合成、無水二糖誘導体の重合による合成などを検討中である。

研究成果

• [文献書誌] 南澤俊和: "生理活性を有する酸性多糖" 繊維学会誌. 52. P63-P68 (1996)
• [文献書誌] Kenichi Hatanaka: "Syntheses of Polysaccharides Having Various Contents of Carboxyl Groups by Ring-Opening Copolymerization" Polymer Journal. 27. 1016-1020 (1995)
• [文献書誌] Ken-Ichi Hanno: "Synthesis of Stereoregular Polysaccharide Carrying 2,3-Di-O-alkyl Chains" Polymer Journal. 27. 911-916 (1995)
• [文献書誌] Kenichi Hatanaka: "A New Synthetic Inhibitor of Glycosyl Transferase" Glycoconjugate Journal. 12. 458-458 (1995)
• [文献書誌] Ken-Ichi Kanno: "Synthesis of(1→6)-β-Linked N-Acetyl-D-glucesamine Oligosaccharide" Journal of Carbohydrate Chemistry. 14. 481-490 (1995)
• [文献書誌] Megumi Kunou: "Mollification of Cytotoxicity of Sufated Polysaccharides by Fibroblast Growth Factors" Journal of Carbohydrate Chemistry. 14. 659-665 (1995)
• [文献書誌] A.L.Rusanov: "Polymer Yearbook 12" harwood academic publishers, 336 (1995)