光学活性高分子化合物は、近年ますますその重要性が認識されるとともに、新しい合成法について研究が盛んである.一方、キラル分子の不斉合成法については、進歩はめざましく、光学純度の極めて高い種々のキラル分子が合成されている.我々は、これまで種々の不斉合成法の開発に取り組んできたが、本研究では、これらの不斉反応をキラル高分子合成に応用することを目的とし、不斉Diels-Alder重合による新規光学活性高分子合成の基礎的知見を得ることに成功した。 1.モノマー合成:モノマーとしては、ジエン成分を含むものと、ジエノフィル成分を含むものについて合成を検討した.ジエン成分としては、フルフリル基、ブタジエニル基の導入を考えた。フルフリル基の導入にはフルフリルアルコールを用い、ブタジエニル基は、イソプレンとホルムアルデヒドとのエン反応によって得られる2-ヒドロキシエチルブタジエンを用いた.ジエノフィル成分を含むモノマーにはビスマレイミドを用いた.また、アクリル酸、メタクリル酸エステルは、ブタジエン、イソプレン等のジエン類と室温以下では触媒がないと反応しない.そこでこれらのジエンとジエノフィル両方を分子内に含むモノマーについても合成を検討した.15EA03:2.不斉Diels-Alder重合:不斉触媒として光学活性ルイス酸を用いて、上記のモノマーの重合を行った.光学活性ルイス酸は、光学活性ジオール、ビススルホンアミド等によって不斉修飾したホウ素およびアルミ化合物を用いた.これら光学活性ルイス酸存在下、Diels-Alder反応が、モノマー間で進行し、対応する光学活性高分子を高収率で得ることができた.ジエンとジエノフィル両方を分子内に含むモノマーの重合では方末端がアクリレート(メタクリレート)型の光学活性マクロモノマー合成が可能であり、現在検討中である.
|