特異的に安定化されたエノール型アニオンを生成するN-置換フェニルマレイミドにおいて、本研究ではN-(4-置換フェニルマレイミド)をモノマーとして研究を遂行した。 当該年度においては、N-フェニルマレイミド(N-PMI)において、 1.アルコキシドアニオンによるN-PMIのアニオン重合を行ない、その成長種のUV-可視吸収スペクトルを測定し、安定成長種は508nmに固有の特性吸収を有することを見い出し、この特性吸収を用いて、N-PMIのアニオン重合反応について詳しく検討した結果、アルカル金属アルコキシドを開始剤とするN-PMIのアニオン重合はリビング的に進行することを明らかにできた。 2.tert-BuOLiを開始剤として用いN-フェニルマレイミドのアニオン重合を行ない、反応系の^7LiNMRを測定した。その結果対カチオンであるリチウムイオンの存在状態に関して重要な知見を得た。 3.メタノール、水、酢酸など種々のpKaが異なる酸を濃度を変化させて重合反応系に加え、重合成長種の濃度変化を分光学的方法により測定し、重合成長種の安定性について評価した。 あわせて、MOPAC等の分子軌道計算ソフトによる量子化学的計算を行い、実験結果との比較検討を行った。 これまでにリビング重合成長種の構造の解明においては、UV-可視、およびNMRスペクトルの解析によってほぼ、そのエノールアニオンの構造を明らかにすることができた。 現在その成長種の異常な安定性とアニオン重合におけるかなりの反応性の関連につき検討を行なっている。
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