研究概要 |
本研究は、共役ポリエンを主鎖とする高分子の側鎖に、液晶基と安定ラジカル基を導入することにより、液晶性と磁性を合わせもつポリアセチレン誘導体を合成し、その液晶性と磁気的性質を検討することで、自律配向能を有する強磁性有機高分子を開発することを目的とした。 そこでポリアセチレンを主鎖として、その側鎖にラジカル基と液晶基を導入した二置換型ホモポリマーを合成した。安定ラジカル基としては、2,6-ジタ-シャリ-ブチルフェノキシラジカル基を用いた。このラジカルは、嵩高い置換基によりラジカル電子が保護されており、通常のラジカル化合物より安定であることが知られている。液晶基としては、フェニルシクロヘキシル系の液晶基を用いた。 具体的には、シクロヘキシルフェノキシ部位をメソゲンコアーとする液晶基をもつ一置換アセチレンを合成した。これと、水酸基をトリメチルシリル基で保護したジタ-シャリ-ブチルフェノール誘導体とをグリニヤールカップリングにより反応させ、二置換アセチレン誘導体モノマーを得た。次に、これを五塩化タンタル触媒を用いて重合し、ポリ(二置換アセチレン)誘導体を合成した。さらに、側鎖のひとつであるフェノール部位の水酸基を脱保護した後、酸化剤を用いてフェノキシラジカルを得た。示差走査熱量計および偏光顕微鏡を用いて、ポリマーの液晶性を確認した。液晶温度領域において電子スピン共鳴の測定を行い、液晶側鎖の自発配向に基づくスピン強度の異方性を確認した。 次に、ラジカル基と液晶基のどちらかを側鎖にもつ一置換型コポリマーを合成した。ラジカル基の割合が10%以下では160〜150℃の温度範囲でスメクティック相に特有なバトネット構造が見られた。さらに液晶温度範囲においてESRのシグナル強度が増加した。これは、液晶ドメイン内での配向に伴ってラジカルスピンが配向したことによるものと結論づけられた。
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