研究概要 |
以下の3腫の高分子についてX線散乱、有機緩和測定を用いて、結晶成長過程の観察、非晶相における分子運動ダイナミクスの高次構造による拘束に起因する変化の測定より、構造形成過程について考察し、高次構造の物性への影響を調べた。 1.アイソタクチックポリスチレンについてはX線散乱、電子顕微鏡観察(EM)より、試料全体の結晶化度は約30%であるが、結晶非晶ラメラ積層内では結晶の厚さの方が大きいことを明らかにした。原子間力顕微鏡(AFM)により得られる試料表面の凹凸からラメラ積層の長周期が定量的に得られることを示した。薄膜からの結晶化ではEM,AFMより基板の種類が結晶の形態、欠陥に影響を与えることを示し、また結晶成長速度は薄膜の厚さに逆比例することをも見いだし、レプテーションモデルに基づいて解析を行った。 2.ポリエチレンテレフタレートのガラスからの結晶化において、誘電、X線散乱同時実時間測定を行った。結晶化に先立ち、誘電α緩和が別の緩和(α')に変化し、その後結晶化に伴う誘電緩和の変化が現れることを見いだした。これは結晶化前に非晶域の分子運動に変化が生じ、その後結晶ラメラの存在によって拘束を受けた分子運動の様式に変化していると解釈される。 3.ポリフッ化ビニリデンについてメルトからの結晶化での誘電、X線散乱同時実時間測定では、結晶相、ラメラ構造の成長と、結晶域の緩和の発達は同時に生じていることを示した。また、流動性物質についての試料セルの問題点が明らかになり、今後の改良の方針が得られた。
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