本研究では時間分解光導波路測定法を開発し、これを高分子強誘電性液晶に適用して、そのSmC^*相が外部電場にたいして示す特異なスイッチングダイナミックスを解明することを目指している。本研究で行った主な項目を以下に挙げる。 1.時間分解光導波路測定装置の開発 強誘電性液晶はマイクロ秒域のスイッチング速度をもつため、これに十分対応できる光導波路測定装置の開発をおこなった。その結果、30ナノ秒の時間分解能で光導波パターンを測定し、試料のもつ膜厚や誘電率の異方性などの測定ができることが確認された。 2.低分子モデル液晶のダイナミックス研究 光導波路測定装置の性能と理論解析を実証するため、スイッチング挙動が単純な低分子ネマチック液晶の解析を行った。液晶配向系は実験室系に配置された屈折率楕円体として捕らえられ、その分子座標系-abcの主値na、nb、ncおよびabc系のオイラー角で記述された。パルス電場を加えたときの分子回転の様子を詳細に解析することができた。 3.低分子強誘電性液晶の過渡構造の解析 低分子強誘電性液晶の内部構造を屈折率異方性より評価したのち、電場反転にともなう過渡状態について、構造評価とその遷移挙動について研究した。その結果、これまで知られていなかった液晶層の過渡ベディング運動が明らかにされた。 4.高分子強誘電液晶のスイッチング挙動の解析 低分子液晶で得られた知見をもとに、構造が複雑な高分子液晶を測定した。その結果、高分子液晶においても過渡ベディング運動が観測され、主鎖の束縛を受けながらも低分子ネマチック液晶の如くミリ秒域で配向スイッチングする液晶の内部構造が明らかにできた。
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