ポリビニルアルコール(PVA)の高温均一溶液をゲル化温度にクエンチした後のゲルの生成過程を時間分割光散乱と時間分割小角中性子散乱により測定した。光散乱により相分離構造が、中性子散乱により網目構造が形成されていく過程が観測された。 光散乱測定では散乱ベクトルQm=5x10-4A^<-1>においてブロードなピークが観測された。時間経過に従いこのピークの強度は指数関数的に増大するが、その位置は変化しなかった。このことよりゲル化の初期においてスピノ-ダル分解型の相分離が進行していることが初めて実証され、ピーク位置よりPVAゲルの相分離構造を支配している特性長が約13000A(=2π/Qm)であることが定量的に明らかになった。また、同様の系で時間分割小角中性子散乱を行ったところ0.01<Q<0.1A^<-1>の範囲でゲルの網目構造が形成されているのが観測された。編み目構造の形成速度が速い場合相分離構造は成長する前に編み目構造により凍結されてしまうが、編み目構造の形成速度が遅いときには充分に相分離構造が発達しゲル構造は不均一になることが分かった。このことはゲルの数ミクロンのメゾ構造を網目形成速度(この系では微結晶形成速度に対応する)を通して制御できることを意味し、さらにはメゾ構造によって決まるゲルの光学的性質や力学的性質を制御できることが明かとなった。
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