ポリビニルアルコール(PVA)の高温均一溶液をゲル化温度にクエンチした後のゲルの生成過程を時間分割光散乱と時間分割小角中性子散乱により測定した 室温(25C)ヘクエンチした際には、光散乱測定で散ベクトルQ_m=5x10^<-4> A^<-1> においてプロードなピークが観測され、ピークの強度は指数関数的に増大するが、その位置は変化しなかった。このことよりゲル化の初期においてスピノ-ダル解型の相分離が進行していることが初めて実証され、ピーク位置よりPVAゲルの相分離構造を支配している特性長が約13000A(=2π/Q_m)であることが定量的に明らかになった。低温(-40C)へのクエンチ試料では相分離に対応するピークは観測されず、ゲル化が相分離に先立って起こり、ゲルの作る網目構造により相分離が阻害されることが分かる。しかし、それを室温に放置すると非常に長時間かけて白濁し、同時に光散乱曲線に非常にブロードなピークが観測され、ゲルの網目構造に逆らって相分離が進行することがわかった。 また、小角中性子散乱により0.01<Q<0.1A^<-1> の範囲でゲルの網目構造が形成されているのが観測された。網目構造の形成速度が速い場合、相分離構造は成長する前に網目構造により凍結されてしまうが、網目構造の形成速度が遅いときには充分に相分離構造が発達しゲル構造は不均一になることが分かった。このことはゲルの数ミクロンのメゾ構造を網目形成速度(この系では微結晶形成速度に対応する)を通して制御できることを意味し、さらにはメゾ構造によって決まるゲルの光学的性質や力学的性質を制御できることが明らかとなった。
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