研究概要 |
二酢酸セルロース(CDA,DS=2.40)が溶液中で示す液晶形成能とその発現機構を、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中での希薄〜準濃厚溶液にわたるCDA分別物の分子形態の変化ならびに会合体形成とその構造変化を通じて詳細に調べた。以下に、通常のホモダイン方式の動的光散乱(DLS)法と新企画のヘテロダイン方式DLS法により得た知見を記す。 1.CDAは希薄溶液中でも単一分子と会合体の2形態で共存する。単一分子の形態はグルコース構造単位のC-2,3,6位の未置換OHの相対分率、グルコース単位のO-5位酸素と隣接単位のC-3位OHとの間の分子内水素結合の度合いに強く支配される。一方、会合体の形態はC-6位OH間で発生する分子間水素結合の様式に依存して変化する。 2.CDA会合体には2形態が同時に存在する。これらは単一分子の4倍長程度の自己集合体(II状態)と13〜40倍長の巨大会合構造(III状態)であり、いずれのサイズ分布も狭い。溶液濃度の増加と共に、IIはIIIに転移する。IIIは濃度に依存する3状態をとるが、このうち、剛直棒状で極めて長い構造をとる形態が液晶形成に関与すると予想される。 3.ずり流動場や遠心力場では、上記の会合体はすべて消失し、単一分子のみが存在する。しかし、遠心力場での分子形態は通常とは異なり、その剛直性は6倍も増加する。 4.『溶液濃度の増加に伴うCDA分子の単一分子→会合体構造への形態転移』、『CDA単独分子の剛直型分子形態への転移』の発現はリオトロピック液晶構造発現機構の素過程の解明に重要な指針を与えるものと考えられる。
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