二成分高分子混合系Poly(2-chlorostyerne)/Poly(vinyl methyle ther)(PSCS/PVME)の一相領域において、紫外光照射によりPSCSを架橋した。反応はPSCS鎖上に化学的に修飾した感光団アントラセンの光二重化反応を利用した。架橋反応の進行と共に、PSCSのネットワークが形成され、不安定領域が拡大し、混合系は相分離する。また、PSCSおよびPVMEの分子量はそれぞれ26万と9万であった。光源は500WのXe-Hgランプであり、強度3mW/cm^2、波長365nmの光を用いた。共存曲線とガラス転移温度に囲まれた一相領域でPSCS鎖を架橋した場合、架橋反応と相分離の競合によって次の4つの場合に分類することができた。 領域(I):ガラス転移温度(Tg)近傍でPSCS鎖を架橋するとTgが上昇する。ある程度反応が速く進行すると、相分離が起こる前に実験温度はガラス温度内に入り、ブレンドは相溶するまま凍結され、擬相溶のsemi-IPNがられる。温度を上昇されると、相分離は起こるが、架橋されるため、相分離構造が百Å程度に限定されることは小角X線散乱によって観測された。 領域(II):共存曲線近傍で架橋した場合、不安定領域が拡大し、実験温度に達すると相分離が起こり、構造は成長するが、架橋のため、スピノール構造が後期まで成長する前に架橋によって凍結された。この過程は、障害物のある場合の相分離動力学について最近、提案されたGlotzer-Di Marzio-Muthukumar(GMD)スケーリング則によく表わすことができた。 領域(III):上述した領域(I)と(II)の間、またPSCSの高濃度の領域である。低温において核生成と成長を伴ったスピノール分解過程が観測され、より高温では同心円のターゲットパターンが得られた。温度をさらに昇させる場合、スピノ-ダル分解と核生成.成長が共存する領域が発見された。一方、PSCSの組成が小さい場合、相分離の誘発がおそく、架橋反応の収率が大きい。そのため、長時間を照射するとネットワークの形成によって生成した弾性ひずみが濃度と結合して、モルフォロジーの等方性から異方性へ転移が起こり、秩序性の高い構造が観測された。上述した光架橋反応によって誘発された相分離構造は一般にModulated Phaseと呼ばれ、反応と相分離の競合尺度を変化させれば、ナノメータからミクロメータまでの広い範囲にわたって設計できる。
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