1.ポリ(ヘキシルイソシアナ-ト)のジクロロメタン溶液に対する動的光散乱測定を分子量が7万〜80万の4試料について行った。最高分子量の試料以外は、得られた時間相関関数は単一指数型関数でよくフィットできた。このフィッティングより得られた相互拡散係数を熱力学的相互作用を考慮したファジ-円筒モデル理論と比較した。実験と理論の一致は良好であり、同理論は半屈曲性高分子の濃厚系中での並進運動に関しても、以前に研究した回転運動と同様に、有効な理論であることが示された。最高分子量試料の溶液に対する時間相関関数は単一指数型とはならなかった。これは高分子の内部運動モードが相関関数に反映されたためだと考えられ、この時間相関関数の解析方法を現在検討中である。 2.分子量分別されたベンジルエステルを側鎖に有するポリイソシアナ-ト5試料について分子量及び固有粘度測定を行った。得られた結果よりみみず鎖円筒モデルのパラメータを決定した。この高分子の持続長(分子の曲りにくさを表す量)はトルエン中で15nmで、同溶媒中でのポリ(ヘキシルイソシアナ-ト)鎖(37nm)よりもかなり屈曲性に富んでいることが判った。 3.ポリ(ヘキシルイソシアナ-ト)とベンジルエステルを側鎖に有するポリイソシアナ-トを溶かしたトルエン溶液について、両高分子の濃度をいくつか変えて光学ラベル化動的光散乱実験を行った(トルエンはポリ(ヘキシルイソシアナ-ト)の等屈折率溶媒)。得られた時間相関関数はいずれの濃度でも単一指数関数から僅かなずれが認められた。このずれの解釈及びより広い濃度範囲にわたる実験を次年度行う予定である。
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