1.ファジ-円筒モデルを用いた動的構造因子の定式化 以下の項目で述べる半屈曲性高分子の2・3成分溶液に対する動的光散乱の実験結果を解析する基礎として、土井らの理論をファジ-円筒モデルを用いて半屈曲性高分子溶液に適用できるように拡張し、動的構造因子の定式化を行った。 2. PHIC/ジクロロメタン2成分溶液に対する相互拡張係数 これまでにその熱力学的性質およびゼロずり粘度の研究を既に詳細に行ってきたポリ(n-ヘキシル イソシアナ-ト)(PHIC)とジクロロメタンの2成分溶液について動的光散乱測定を行い、相互拡散係数の濃度・分子量依存性を調べた。 3. PBPICの分子特性決定 次の項目4で述べる、光学ラベル化動的光散乱実験に用いるポリ(3-(ベンジルオキシ-カルボニル)n-プロピル イソシアナ-ト)(PBPIC)の分子特性解析を行った。得られたパラメータ値は項目6で述べる自己拡散係数の実験と理論との比較の際に用いた。 4. PBPICのPHIC/トルエン2成分溶液中での自己拡散係数 等屈折率であるPHIC/トルエン2成分溶液に高屈折率のPBPICを溶かした3成分溶液に対して動的光散乱測定を行い、PBPICのPHIC溶液中での自己拡散係数を決定した。 5.高分子間流体力学的相互作用の効果の考慮 有限の濃度の溶液中で各高分子の易動度が、周りの高分子の運動で引き起こされた溶媒の乱れによって影響を受けるとして、従来のファジ-円筒モデル理論の改良を行った。 6.実験と理論の比較 項目2と4で述べた相互拡散係数と自己拡散係数の実験結果が、項目5が述べた改良ファジ-円筒モデル理論によって定量的に再現できた。理論中に含まれるパラメータとしては以前にPHIC溶液のゼロずり粘度の実験と理論の比較から決定したものを用いた。すなわち、ファジ-円筒モデル理論は半屈曲性高分子濃厚溶液の拡散係数とゼロずり粘度を首尾一貫して説明できることが示された。
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