静的には材料に破壊を起こさないような変形量あるいは応力でも材料に繰り返し加わると材料の構造や性質が変化してついには破壊に至る。この現象は疲労破壊と呼ばれる。疲労はどんな材料でも必ず起こるといっても過言ではない。現在まで材料の疲労を完全に防止する方法あるいは材料設計の基準は明らかにされていない。高分子複合材料の強化材を応力集中源とならない分子レベルの次元まで分散、微細化し、官能基間の相互作用により界面強度を向上させた高分子ナノ複合材料の開発が耐疲労性向上の一つの解決手段として考えられる。本研究では主鎖型液晶ポリエステル(LCP)を強化材とし、それと化学構造の類似したポリブチレンテレフタレート(PBT)をマトリックス高分子として用いて高分子ナノ複合材料を調製した。密度測定、形態学的観察より、LCPはその重量分率が20wt%以下でミクロフィブリル状に分散し、力学的強度が向上していることが明らかにされた。一方、LCPの重量分率が20wt%以下ではPBTの結晶系のβ型への転換と微結晶の寸法の増大をもたらした。複合系の疲労特性を粘弾性追随型疲労試験機を用いて測定し、LCPの重量分率が20wt%以下の複合系では、試料の温度上昇が抑制され、耐疲労性が向上することを明らにした。
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