可逆的酸化還元能を有するビオローゲン部位あるいはニコチンアミド部位をアルキル長鎖(n=10)で連結した新規なβ-シクロデキストリン誘導体(1、2)を合成した。いずれの誘導体も液体クロマトグラフィーで精製し、NMRにより純度を確認した。 誘導体1は、'H-NMRにより重水中でメチレン部位の包接が示唆され、さらにNOEよりその包接が確認された。サイクリックボルタンメトリーでは、ビオローゲン部位に起因する2段階の可逆的酸化還元波が観察された。興味深いことに第一波の還元ピーク電流値は第二波の30%程度しかなく、さらに第2波の還元ピーク電流値でも理論的に予想される値の半分程度であった。この大きな電流値の減少は分子間の包接によるオリゴマー様の超分子の生成に起因し、第一波と第二波の大きな電流値の差は包接錯体の安定性の違いによると説明することができた。高分子量の超分子生成は粘度の増加によって確認することができた。 誘導体2についても1と同様な測定によって包接錯体の生成が認められた。さらに、ニコチンアミド部位の弱い誘起円二色性スペクトルが観察されたことより、この部位は、シクロデキストリンの開口部付近に存在することがわかった。 以上より、本シクロデキストリン誘導体はいずれも分子間包接をしていることが明らかになり、本研究の目的の大部分を達成することができた。今後、酸化還元により大きな粘度変化をする材料の分子設計をすることが望まれる。
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