研究概要 |
表面修飾ポリアミノ酸膜を種々の条件で調整し、膜電位の最大に自励発振する系を探索した。以下に具体的な研究成果を示す。 1.表面修飾膜の調整:ポリ(γ-メチル-L-グルタマート),PMLG,を再沈精製し、キャスト法によりPMLG膜を製膜した。PMLG膜を様々なジアミン中に浸漬させ、アミノリシス反応によるジアミン化ポリアミノ酸膜を調整した。ジアミン化置換率を元素分析法により決定した。 2.表面修飾膜のキャラクタリゼーション:表面修飾ポリアミノ酸膜をニンヒドリン処理し、吸光度を測定した。570nmにおける吸光度と元素分析により得た置換率との間には1次の相関性が観察された。膜断面を切断し、X線分析により厚さ方向におけるジアミン化置換率を解析した所、表面セグメントは、数10μ表面より内部に導入されていることが明らかとなった。 3.膜電位測定装置並びに解析プログラムの作成:膜電位測定装置を組み立て、高感度電位測定装置からの出力をデータステーションに読み込み解析するプログラム(高速フーリ工変換によるパワースペクトルへの変換)を作成し、駆動することを確認した。 4.表面修飾膜の膜電位測定:種々の表面修飾ポリアミノ酸膜に対する膜電位を測定した。表面修飾セグメントは、セグメントが長い方(ヘキサメチレンジアミン)が、短い(エチレンジアミン等)膜より大きな振動を誘起していた。両セル中pHが高ければ高いほど膜電位振動の振幅は大きかった。pH10において側鎖のアミン基は、50%解離していると考えられるので、側鎖荷電基の完全解離は膜電位振動において好ましくないと推定された。セル中の温度を変化させて測定(3℃-45℃)した所、測定温度が高い方が膜電位振動の振幅は大きかった。このことから、膜電位振動は、表面セグメントの熱的ゆらぎに起因すると考察した。
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