古典的な酸素結合系であるサルコミン微結晶を分散、相溶性よく高分子中に担持させると、極めて鋭いS字型の酸素収着平衡曲線を示すことを見出した。いわば協同的な結合反応が極めて単純な複合ポリマー材料で、気体酸素分子を対象にはじめて観測されたので、この協同過程をサルコミン微結晶の構造とそれを取り込む高分子物性の作用として解析し、高分子に独特な協同効果としてシュミレーションするとともに、雰囲気の酸素濃度に応答して物性が顕著に変化するオンオフ素子として応用する可能性を明らかにすることを研究の目的として次の成果を得た。 まず一定の手順で微結晶化したサルコミンを、ポリオクチルメタクリレートなどに均一に分散して、均一で柔軟なフィルムを作成した。酸素濃度(分圧)とサルコミン高分子への酸素の収着量の関係は、酸素分圧15cmHgに到るまではほぼゼロを保った後、急激に飽和に達した。このS字型収着曲線の位置と立ち上がり度を協同効果の係数として数値化できた。酸素収着にともない試料片の色調および赤外吸収は変化するので、これを標識として高分子固相内での酸素結合過程をin situ解析できた。次いで、酸素を結合したサルコミン結晶のX線構造解析など、酸素結合にともなう微細構造の変化を定量化した。これが複合ポリマーでのバルクな形態変化を引き起こす過程を証明した。さらに、カーボンなどのサルコミン複合系も調製し、酸素結合を一般現象として検討した。サルコミン系からオンオフ素子を組み立て、電気信号による酸素結合・放出も実証した。以上を総合して、酸素結合の協同効果発現に必要な因子を議論、オンオフ素子としての設計手順をまとめた。
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