本研究では、軸方向加速成分であるブロ-イング力に着目する。ブロ-イング力のみが作用する流れ場は一次元流れ場となる。数値計算から予想される流れ場の構造と実際の流れ場を比較するために、MPDアークチャンネルを制作し、電流分布、電子温度と電子数密度を測定した。推進剤にはアルゴンと窒素を用い、放電時間は1.2msec、放電電流は8kAに設定し、流れ場は磁気レイノルズ数によって分類した。 1.アルゴンでは陽極、陰極表面上共に、電流は下流のセグメントに集中しており、両方の分布を比較すると陰極の方が変化が緩やかであった。また、Rm≧5以上の流れでは数値計算で見られるような電流の集中が上流で観察された。電子温度と電子数密度の分布はチャンネルの中間ではほぼ等しく、チャンネルの両端で大きく異なった。数値計算ならびに実験によって得られた物理量を比較すると、チャンネル内のほとんどの領域において定性的な一致が見られた。よって、アルゴンの場合数値計算からおおよそその加速過程を理解することができるものと考えられ、実際の流れ場においてチャンネル入口・出口付近の2つの加速領域が存在することが予想される。 2.窒素の場合、放電電流はチャンネル出口付近に集中し、上流域ではほとんど流れなかった。これは二原子分子ガスでは解離反応があり、プラズマ化が遅れるためである。数値計算の結果は実験結果と大きく異なり、さらなるモデル化が必要であることがわかった。 3.MPDチャンネル実験はブロ-イング加速を解明する目的で行われたが、電子ホールパラメータが1以上の領域もあり、軸方向の電流成分が存在することから完全なブロ-イング加速の実現にはさらなる実験装置の改良が必要である。
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