本研究では、ソーラーパネルを念頭に置いたポテンシャル場のダメ-ジディテクションおよびその発展としての宇宙構造物を念頭に置いたトラス構造物のダメ-ジディテクションシステムに関する基礎的研究についてまとめている。 まず、ソーラーパネルへのヘルスモニタリングのモデルとしてのポテンシャル場の欠陥同定問題について述べている。具体的には、ポテンシャル場を境界要素法を用いて離散表現し、実際のパネルの出力値(観測値)と境界要素モデルによる計算値との残差の二乗和を零にする二乗誤差最小化問題として欠陥同定問題を定式化している。同定手法としては、生物進化にヒントを得たアルゴリズムである遺伝的アルゴリズムとファジィルールを導入している。実際にシミュレーションを行い、提案した手法によって有効にソーラーパネルのモデルとしてのポテンシャル場に生じた欠陥を同定できることを明らかにしている。 次に、ポテンシャル場のヘルスモニタリングで提案した手法を、宇宙構造物としてのトラス構造物の欠損部材同定問題に適用している。この問題は、ポテンシャル場の場合の発展として扱われている。ここで、欠損部材とは、構造部材として機能しなくなった部材を指している。従来から提案されている手法は、系の固有振動数や振動モードデータを用いたものであるが、本研究における手法は構造物の静的な変形を捉えて同定しようとする手法である。数値シミュレーションによって、提案した手法の有効性が示されている。 なお、ソーラーセルおよび構造に装着するセンサーを少なくするために、本研究ではいずれの場合も一部のセルや一部の部材にセンサーを装着することを前提にしているにもかかわらず、良好な結果が得られている。今後の展開としては、実際のヘルスモニタリングへの適用が考えられる。
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