本研究は、すでに開発ずみの有限要素弾塑性の板曲げ数値解析プログラムの有効性と船体外板の曲げ加工の実用化を目差し、板曲げ加工用の試作機を用いて、多点プレス板曲げ実験を実施した。その結果、(1)基礎的な曲面形状である円筒型、鞍型、枕型のうち、円筒型については、便宜的な呼称である部分プレス法で曲げ加工が可能な確信を得、さらに鞍型に於いても、この部分プレス法によりある程度の成形曲面が得られることが判った。しかし、枕型については、局部座屈に似た折れ曲がりが生じる問題点が残る。 (2)今の処、この枕型に生ずる折れ曲がりを防ぐ手段にプレス位置の再配置の検討とバネりん青銅板を敷いて面外の変形量の均等化を計ることで、曲面の成形限界を増すように試行錯誤的に実験を行っている。その理由に、横荷重の面外変形に及ぼす影響係数を、簡単な解析解より計算してみると、この現象の生ずる部位はこの係数が小さく、逆に膜応力が大きくなる。また影響係数の大きい所は面外の変形が大きく、その代わりに膜応力が小さいことが観察されたことによる。従い、折れ曲がり座屈現象を取り除くには面外の変形量の分散化が必要と考えており、要するに、面内応力を小さくして、曲げ応力を増すように曲げ加工をすれば良いのではとの見解を持っている。(3)また、部分プレス法では局所的に数少ないプレスヘッド群に外荷重が負荷されることになり、そのため荷重ヘッドの許容荷重不足の改善を行った。そのため、外荷重と反力荷重の絶対値がほぼ同じになり、安定した実験荷重が得られた。これの設計過程については、簡単に報告の予定である。また、実験は現場のぎょう鉄作業を則る方法であるものの、ロール方向が曲げ加工板の残留曲面に及ぼす効果は、未だ、確かな傾向は把握できない状態である。
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