今年度の研究において、新たに得た知識は、実用化に研究の力点を置いたことから、まず板曲げ加工中に局部座屈の原因となる局所的不整量の発生の防止策にある。それには、合計36本あるプレスヘッドの再配置を試みた。その結果、正方形板では、供試材の寸法が大きいこともあり、一定以上の設定曲率半径(3000mm×3000mmの枕型まげ)の実験では、折れ曲がりとなって現れる局部座屈を防ぐことは出来なかった。しかし、実際のぎょう鉄作業を参考に、アスペクト比が1.6の長方形板の曲げ加工を行った。成果としては、船体外板の作業現場が要求する残留の曲率の範囲に充分に応える事が可能になった。また、成形限界をあげる目的により、繰り返し曲げ加工も試みたところ、長方形板では残留曲率半径も小さくなり、効果的なことが判明した。これに関してはロール方向の残留曲率に及ぼす効果も含めて整理し、公表の予定である(平成10年塑性加工学会春季講演会)。以上が今年度の成果であるが、長尺板の曲げ加工とねじり曲げ加工の曲面は今後の研究課題に残されることになった。しかし、実験研究より得た知識から判断するに、多点プレス法は等間隔配列のプレスヘッドではなく、局所的な不整量の発生する部位に密に配置すると、良好な成形曲面が得られる。従い、すでに多点プレス曲げ加工機を所有する現場においては、大幅にプレスヘッド位置を変更する必要がなく、また折れ曲がりは必ずプレスヘッドとプレスヘッドの間に起こるから、その場所を何等かの手段を講じ、面外の横たわみを規制することにより、ほぼ、曲げ加工の過程の途中から設定曲面時点まで座屈が生ずることはない。例えば、プレスヘッドの追加、あるいは剛体をその場所に置いてその上より負荷するなどが当面の手段に挙げられよう。
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