固体材料は複合材料であると否とを問わず、メソスコピックなスケールで観察すれば必ず多相材料である。ここに、メソスコピックなスケールとはマクロ連続体力学とミクロ分子動力学の中間的なスケールであり、多結晶固体に対しては結晶粒スケール、複合材料に対しては繊維、粒子などのインクルージョンスケールを意味する。本研究は、多相材料の破壊挙動をより包括的に扱えるメソスケールの計算力学的手法の構築を目的として実施された。すなわち、代表者らが開発してきた、計算不連続体力学モデルによるマイクロクラッキング脆性固体のメソ解析アルゴリズムを、繊維、粒子などを含む多相材料に適用し、これらの第2相固体が剛性、破壊靱性などに及ぼす影響を定性的、定量的に把握するとともに、その結果に基づいて均質化法、損傷力学などのマクロなモデル化を評価、改良した。特に、海洋構造用新素材としての期待度から、セラミックス、コンクリートなどを母材とする複合材料のモデル化に重点を置いた。まず、マイクロインクルージョン(特別な場合としてマイクロボイドを含む)を含むマイクロクラッキング脆性固体の3次元メソ解析アルゴリズムを構成し、続いて繊維を含む脆性固体の3次元メソ解析アルゴリズムを構築した。さらに、マイクロインクリージョンあるいは繊維を含む脆性固体の等価弾性定数計算を行ない、既存の均質化法などによる理論解を評価、改良した。また、マイクロインクルージョンあるいは繊維を含む脆性固体の損傷発展に関する非定常計算を行ない、既存の連続体損傷力学モデルを評価、改良した。
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