大分県九重火山群の中の一つである星生山東麓に位置する活発な火山性噴気地帯(通称九重硫黄山)から放出される火山性ガスを起源とする酸性雨の化学特性の空間的時間的変動を明らかにするために、1995年3月から12月までの10カ月間、周辺地域に雨水計(10カ所)を設置し定期的に雨水の採取および化学分析を実施した。この間、10月11日に、九重硫黄山において約250年ぶりに突然噴火活動が開始し、火山ガスの放出量が噴火前に比べ飛躍的に増加した。今年度の観測を通じて、このような火山活動の激変が周辺地域の雨水の酸性化にどのような影響を及ぼすかを定量的に評価することができた。さらに、これらのデータをもとに推定される噴気帯からのHClガス放出速度は噴火の約2カ月前から急増しており、このことは10月11日の噴火活動の再開以前に地下のガス圧が上昇していたこと示唆していると考えられる。 酸性雨の地下浸透に伴う土壌との反応については、現地土壌のイオン吸着量と土壌種の関係から、地下に浸透した酸を主に中和する機能を持つ赤ボクに注目し、これを用いて円筒形の土壌カラムを作成し、これに2年分の雨量に相当する人工酸性雨を供給する室内実験を実施した。その結果、人工酸性雨中の硫酸イオンはほとんど土壌に吸着され、流出水はほぼ中和されていることが分かった。
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