昨年度の研究で、オーストラリアのウラン鉱山周辺の水、土壌から、高性能ウラン濃縮菌数種を分離した。一方、宮崎県内の金属鉱山周辺の水、土壌について、水銀、鉛、銅、カドミウムなどの重金属濃縮菌の検索を行い、水銀、鉛などを高濃度に濃縮できる微生物数種を分離した。また、生体物質の一つである樹皮について、重金属吸着能を調べたところ、キタコブシ、シナノキなどの樹皮が高いウラン吸着能を示すことを見出した。今年度は、微生物を利用するアクチノイド元素回収研究の一環として、微生物によるプルトニウム及びトリウムの濃縮について調べた。その結果、Bacillusなどの細菌はpH1のような酸性条件下で、プロトニウムを濃縮できることが明らかになった。また、微生物によるプルトニウム濃縮は、プルトニウムの価数によって異なることもわかった。これらの成果は、日本原子力学会秋の大会(1997年10月、沖縄)で報告した。一方、Micrococcus菌は、菌体1g当たりに110mgのトリウムを高濃度に濃縮することができ、該菌体は、pH3.5のような酸性条件下で、トリウムを濃縮できることもわかった。また一方、銅を濃縮した微生物を電子スピン共鳴法で解析したところ、微生物中の銅(II)イオンは、2個の窒素原子と2個の酸素原子を含む配位子と結合しており、非ブルー銅タンパク質と同様の配位子環境にあることが明らかになった。
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