研究概要 |
今年度は先ず、リンゴへの遺伝子導入を行うにあたり大きな要因となる、再分化系の確立を図った。栽培品種‘王林'を材料として、再分化のための培養条件を検討した。無菌的に培養したシュートの葉身から再分化を試みた結果、1/2MSにBAP7mg/l、NAA0.2mg/lの条件で34.4%の再分化率が得られた。また、葉身を葉柄側から葉頂にかけて2〜4群の葉切片に分け、それぞれの再分化率を検討したところ、1.1〜1.5cmの葉身の中央部が最も高い再分化率(75%)を示すことが明らかにされた。さらに、抗生物質の濃度の検討から形質転換体の選抜には、カナマイシン25mg/l、除菌にはセフォタキシン300mg/lが最適であることを見い出した。次に、リンゴ果実の過熟を抑制するため1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)合成酵素(S-adenosyl-L-methionine methylthioadnosine-lyase,EC4.4.1.14)のcDNAを用いて、これをアンチセンスで導入し、エチレン合成系を制御出来る可能性に着目し、ACC合成酵素遺伝子のcDNAの作成を試みた。収穫期のリンゴ‘ゴールデンデリシャス'の果実から全RNAを抽出し、これを鋳型としてRT-PCRを行ったところ、約1,200bpの増幅産物を得、これがACC合成酵素遺伝子のcDNAであることを確認した。 今後はこのcDNAをバイナリーベクターに挿入し、リンゴ栽培種に導入する実験を開始するとともに、既にクローニングされているACC合成酵素遺伝子のゲノミッククローンの塩基配列の決定を進める予定である。
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