研究概要 |
分子遺伝学的手法によって野生種のもつ有用遺伝子を解析するため、遠縁交雑の遺伝的多様性を利用する研究は今後有望であると考えられる。しかし、このような研究は、これまでトマトのみならず他の作物においても高い交雑不親和性などの障壁のため殆ど皆無であった。平成8年度は、前年度に引き続き、(1)これまで検討されていない栽培種とL.peruvianumLA2575及びL.chilensePI128652の戻し交雑世代を材料として、分子マーカー(RAPD,酸性ホスファターゼ遺伝子、インベルターゼ遺伝子)の分離の歪みを検討し、B_1においてはヘテロ型が約2倍多くなる分離の歪みが観察された。(2)不定芽形成能と分子マーカーの連鎖を明らかにするため、栽培種と野生種L.chilensePI128644の種間雑種後代一戻し交雑世代B_1、B_2を分析し、根切片培養における高度不定芽形成能と密接に連鎖する2個のRAPDマーカーを見出し、また、第3染色体に座乗すると考えられるインベルターゼ遺伝子が不定芽形成能関連遺伝子の一つと密接に連鎖することを明らかにした。(3)栽培種とS.lycopersicoidesの大細胞雑種及び後代について、葉緑体DNAの種類の判定、Tanksley et al.(1992)のRFLPプローブによる核DNA分析、、GISHによる染色体分類を行い、親の葉緑体は雑種固体へ均等に分配されること、雑種固体の大部分は両親のRFLPバンドをもつが、新しいバンドをもつ固体も存在すること、GISH法により両親の染色体の判別が明確に可能であることを明らかにした。
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