研究概要 |
研究成果の概要 分子遺伝学的手法によって野生種のもつ有用遺伝子を解析するため、遠縁交雑の遺伝的多様性を利用する研究は今後有望であると考えられる。しかし、これまでトマトにおいてこのような研究は高い交雑不親和性の障壁のため殆ど皆無であった。本研究は、まず、(1)独自に開発した胚珠選抜培養法の雑種獲得効率を検討すると共に、本研究の植物材料である種間雑種及びその後代一戻し交雑世代の育成経過を明らかにした。つぎに、(2)栽培種ア-リピンクと野生種L.peruvianum var.humifusum間の戻し交雑世代B_2、B_3、B_4について、インベルターゼ遺伝子判定用プライマー(Harada et al.1995)を栽培種とL.peruvianum間の雑種及び後代に対して初めて適用し、L.peruvianumのショ糖蓄積型インベルターゼ遺伝子をホモにもつ(L.peruvianum遺伝子型)、自家和合性で栽培種の遺伝的背景をもつ系統を選抜することに成功した。(3)これまで検討されていない栽培種とL.peruvianum,L.chilenseの戻し交雑世代における分子マーカー(RAPD,酸性ホスファターゼ遺伝子、インベルターゼ遺伝子)の分離の歪みを検討した。(4)不定芽形成能と分子マーカーの連鎖を明らかにするため、栽培種と野生種L.chilenseの種間雑種後代一戻し交雑世代B_1、B_2を分析し、根切片培養における高度不定芽形成能と密接に連鎖する2個のRAPDマーカーを見出し、また、第3染色体に座乗すると考えられるインベルターゼ遺伝子が不定芽形成能関連遺伝子の一つと密接に連鎖することを明らかにした。(5)栽培種とS.lycopersicoidesの体細胞雑種及び後代について、葉緑体DNAの種類の判定、Tanksley et al.(1992)のRFLPプローブによる核DNA分析、、GISHによる染色体分類を行い、親の葉緑体は雑種個体へ均等に分配されること、雑種個体の大部分は両親のRFLPバンドをもつが、新しいバンドをもつ個体も存在すること、GISH法により両親の染色体の判別が明確に可能であることを明らかにした。
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